社寺が世界遺産に登録されている栃木県日光。その地で、一四〇年近くにわたって営業している日光金谷ホテルに私が訪れたのは、雪の降りしきる日だった。しかし、案内された部屋は、十分過ぎるほどに暖まっていた。エアコンのほか、二つの大きなスチーム暖房機がフル稼働していたのである。このホテルでは、いち早くスチーム暖房を導入したと言われている。その時間は、一九一四(大正三)年から一九一八(大正七)年にかけて。すると、一〇〇年近く現役で働いていることになる。
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寒さの厳しい日光では、ずいぶん重宝がられてきたことだろう。「いやあ、それでもスチームは管理が難しいのですよ。常に注意が必要です」こう教えてくれたのは、一九六三年からこのホテルで働き、管理部長を一〇年間務めた関係者である。味わいのある暖かさには、手入れが必要だということなのだ。それに、内と外の気温差が激しいので、窓に襖を入れている部屋では、その襖が反ってしまうことがあるという。だから、部屋が使用されないときは、自然の温度に戻す平間も必要になってくる。年代を経た建物の維持管理には、外見では分からない苦労があるようだ。