文章をどう構成するかがきわめて重要

2011.08.05

楽譜を読む技術がいくらすぐれていても、歌という形で表現する技術がすぐれていなければ、歌手にはなれない。翻訳者の場合なら、外国語を読む技術、内容を理解する技術がいくらすぐれていても、読み、理解した内容を読者に伝える技術がすぐれていなければ、なんの意味もない。読み、理解するのは、読者に伝わる文章を書くためなのだ。翻訳者が売っているのは、外国語を読む技術ではない(まして「語学力」ではない)。内容を理解する技術でもない。売っているのは訳文だけである。文章の力がなくては、翻訳はできない。もちろん、一般に文章力というとき、翻訳の場合には関係しない点も多い。日本語で書き下ろす場合なら、何を書くかがどう書くかよりはるかに重要だ。翻訳の場合には、何を書くかは原著者が考えてくれる。どう書くかでも、文章をどう構成するかがきわめて重要である。翻訳の場合には、文章の構成も原著者が考えてくれる。翻訳者に必要なものは、文章力のなかでもごく一部にすぎない。しかし、必要な部分で要求される水準は、決して低くはない。