著者のMarciaAngellさんは、この一連の裁判の過程にあって、医学的にはシリコーン自体が生体に対していかなる弊害をおこすのかについての確定的な科学的結論が出ていないにもかかわらず、裁判では原告女性の体調不調に至るまでシリコーンによって惹起される結合組織病などとして捉えられ、次々と判決が下されていった事に対して、科学者としての強い関心を示していた。そこで彼女はこの裁判の過程において、医学的な事実がどのように認識され、評価され、裁判の資料に採用され、取り扱われてきたか等について事実関係を詳細に検討した上で科学者の立場から検証した。そして結論として、裁判における科学的事実の取り扱いについて、興味本位に流れるマスメディアの取り組みについて、医療裁判における科学者の役割について、弁護士の活動について、アメリカ政府つまりFDAの取り組みについて、それぞれの立場において反省すべきである事を諭している。この本の出版以降は、原告女性たちが巨額な賠償金を勝ち取る頻度は極めて少なくなった。この記録はアメリカにおける医療材料関係のPL問題を考慮するにおいて、貴重な示唆を与えている。読者はこの翻訳書を読むことによって、このような混乱状態にあったアメリカにおける医療関係の裁判の事例、社会問題を通して医療材料に関するPL問題の社会の反応の仕方、ジャーナリストの捉え方、企業の取り組み方、一般人の考え方等、広い範囲にわたって、考える資料を得ることができると思われる。私自身もMarciaAngellさんの考え方に触れて多くの示唆を得た。
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