彼女が着るとストレッチ・パンツはどこか優しい雰囲気になり、上にシルクのブラスを組みあわせても似合いそうだった。靴はスエードのデザートブーツにして、ウエストにエルメスのベルトをしてもステキ、パールのブレスレットも合いそうよと盛り上がる。クリスティーナ(仮名)が選んでくれた、毛皮のフードのついたベージュ色の丈の短いジャッコーネをはおると、エレガントな上品さが際立った。ミラネーゼのまねをしたマニッシュではなく、こんな彼女らしいパンツの着こなしを見つけられたことに私も満足していた。次の日の朝、彼女はマルペンサ空港から日本へ帰って行った。部屋で荷作りをしながら「軽い、軽い」と笑ってトランクを持ち上げて見せた。結局、彼女が買ったものは、あのストレッチ・パンツ一枚だけだったのだ。今回みたいにモノを買わなかった旅行は初めてよ。でも一番欲しかったパンツを買えたんだから、よかった。そう言って旅立ったこの同い年の友人を、私はいつになく愛おしい気持ちになって見送った。