宇宙のエネルギーを光に託し、自らの想いとともに表現する06年の「TomNaH−iu(トムナフーリ)」制作時に見つけたミラクルピッチ。「これも偶然の産物でした」と楽しげに語る。「LEDとガラスの間に一定の距離(ピッチ)をおいて点灯してみたら、星がピカーンと光ったような感じになったのです。これはミラクルピッチだって言って(笑)、その後もこの仕様を継続しています。そうした偶然を受け入れて生かせるところは、アートの良さかもしれません」新しい科学技術を新しい表現方法として取り入れていく。これは、ボキャブラリーとか増えたような感じだとM氏は話す。「科学技術とアートは遠い存在のようでいて、実はとても近いところにあるのではないかと思うことがあります。アプローチの仕方は違うけど、どちらも真実を探求するものですから。共鳴する部分が多々あります」瀬戸内海の豊島に設置されることになった「トムナフーリは、岐阜県飛騨市の神岡鉱山内にあるスーパーカミオカンデとネットワークで結ばれ、ニュートリノが検出されると光を放つ。ニュートリノも実際は目に見えず、スーパーカミオカンデを通るときにチェレンコフ光を発し、それが光として検出される。そのシステムを、ガラスのオブジェと結び付けた。一方、新作「WhiteHole」は、ブラックホールに吸い込まれた星のエネルギーが再生するようなイメージでつくった。「さまざまなお話を科学者の方たちから聞き、それが私のインスピレーションを刺激しています。星の生死が地球上に生命を誕生させるきっかけとなっていること、宇宙の96%はダークエネルギー、目に見えないエネルギーで満たされていること。ふだんの生活からは想像も及ばないかもしれませんが、宇宙や自然界のエネルギーを意識すると、自分の存在自体もその一部であることを強く実感できる。その感覚を表現に高めたいと考えています」