文字を求めての訪問地域は膨大である。幸いなことに、親父が海外に行き始めた一九六九年以後というのは年々円高になり、日本人にとって海外はより近くなっていた。死ぬ年までこの旅は続いた。一見、少ない年があるが、二度三度訪れている国があるからで、インドなどは各地方ごとに数回は行っていたと思う。もちろん、この間にはN印刷の社長にも就任しており、社業をおろそかにしていたわけではない。海外旅行は年三回までと堅く決めていた。いきおい日程はハードになる。しかも年々まだ足跡を印していない、へんぴなところへばかり行くものだから、ラクダに揺られてサハラ砂漠というような冒険旅行になってしまう。日本にいるときは二階に行くのにもエレベーターを使うような運動嫌いなのに、海外へ行くと不思議にもじつにこまごまと動く。それに普段は寝坊なくせに、海外に出ると馬鹿に早起きである。心底旅が好きだったとしかいいようがない。
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